醤油は日本の食卓に欠かせない調味料ですが、その栄養素についてはあまり知られていません。
この記事では、醤油の5大栄養素、3色食品群、4つの食品群、6つの食品群における分類、含まれる栄養素の種類と効果について詳しく解説します。
醤油に含まれる栄養素は?5大栄養素などの各分類と醤油の位置づけ
醤油には、ナトリウム(塩分)、たんぱく質、炭水化物などが含まれていますが、特にナトリウムの含有量が顕著です。また、微量ながらビタミンB群、特にビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニアシンなどの栄養素も含まれています。
醤油は発酵食品であるため、これらの栄養素のほか、消化を助ける酵素や、抗酸化物質も含まれていることがあります。ただし、栄養素の具体的な含有量は、醤油の種類や製造方法によって異なります。
ナトリウム、たんぱく質、炭水化物、ビタミンB郡、ミネラル、抗酸化物質
ここでは、醤油に含まれる栄養素を元に、5大栄養素、3色食品群、4つの食品群、6つの基礎食品群といった分類で見ていきます。
これらの分類は主に栄養素やその働きによって分類されているので、必ずしも直接的に醤油がこれらに分類されることは少ないですが、醤油に含まれる主な栄養素からこれらに分類すると以下のようになります。
しょうゆ | |
5大栄養素 | ミネラル、たんぱく質 |
3色食品群 | 赤色、緑色 |
4つの食品群 | 第4郡:穀類、油・調味料・砂糖など |
6つの基礎食品群 | 1群:肉・魚・卵・大豆製品 |
以下、詳しく見ていきます。
5大栄養素から見た醤油
5大栄養素とは、人間の健康維持や成長に必要な栄養素を大きく5つに分類したものです。具体的には、以下のように分けられます。
5大栄養素
タンパク質 | 体の構成成分であり、筋肉や臓器、血液などを作る基本的な素材。修復や成長に必要。 |
---|---|
脂質 | エネルギー源としてだけでなく、細胞膜の構成やホルモンの原料としても重要。 |
炭水化物 | 主要なエネルギー源。糖質(単糖類、二糖類、多糖類)から成り、体のエネルギーを供給する。 |
ビタミン | 体の機能を正常に保つために必要な微量栄養素。多様な生化学的機能に関与。 |
ミネラル | 骨の形成、酵素の活性化、体液のバランス維持など、生命活動に必須の無機質。 |
醤油は5大栄養素で言うと、ミネラルであるナトリウム、たんぱく質を多く含みます。
3色食品群から見た醤油
3色食品群は、食品を栄養素の働きの特徴によって、食品を「赤色・緑色・黄色」の3つに分類したものです。 この分類は、学校給食の献立表などでも取り入れられています。
具体的には、以下のように分類されます。
3色食品群
赤色 | 血や肉など人体のもとになる栄養素が含まれる食品。肉・魚・卵・乳製品・大豆など、主にタンパク質を含む食品が該当します。 |
---|---|
緑色 | 体の調子を整える働きを持つ栄養素が含まれる食品。野菜・果物・きのこ類などが該当し、ビタミンやミネラルを豊富に含みます。 |
黄色 | エネルギーのもとになる栄養素が含まれる食品。米・パン・麺類・いも類・砂糖・油など、主に糖質や脂質を含む食品が挙げられます。なお、いも類は三色食品群の分類上は黄色の食品に該当しますが、緑色の食品のように、体の調子を整えるビタミンなども比較的多く含んでいます。 |
醤油はナトリウム、たんぱく質を多く含みますので、3色食品群で言うなら赤色、緑色に該当します。
4つの食品群から見た醤油
4つの食品群とは、食品を栄養素ごとに4つに分類したもので、それぞれのグループから、1日に必要な量をとると、バランスのよい食事ができるように考えられています。
女子栄養大学創始者の香川綾が考案したもので、高校の家庭科教科書に採用されています。
4つの食品群と主な栄養素
第1群:卵・牛乳・乳製品 | たんぱく質、カルシウム、ビタミンA、D |
---|---|
第2群:魚介・肉類、豆・豆製品 | たんぱく質、鉄、ビタミンB群 |
第3群:野菜・芋・果物 | ビタミン、ミネラル、食物繊維 |
第4群:穀類、油・調味料・砂糖など | 炭水化物、脂質 |
基本のルールは次のとおりです。
- 食品を第1群、第2群、第3群、第4群の4つのグループに分ける。
- 食品の重量は、80kcalを1点とする単位で表す。
- 1日に食べるべき食品の量を第1群から第4群の各食品ごとに点数で示す。
- 1日に食べる点数は、第1群から第3群までは、3点、3点、3点とし、摂取すべきエネルギーにより4群の点数を決める。
4つの食品群で言うなら醤油は調味料なので第4郡に該当します。
6つの食品群から見た醤油
6つの基礎食品群は、食品を栄養素ごとに6つに分類したものです。
6つの基礎食品群は、日本の農林水産省と厚生労働省が共同で提唱した理論です。1948年に発表された「日本人の栄養所要量」に基づいて、1952年に当時の栄養改善普及会(現在の日本栄養改善普及会)によって作成されました。
当時は「6つの食品群」と呼ばれていましたが、2000年に改訂され、現在の「6つの基礎食品群」となりました。
6つの基礎食品群と主な栄養素
1群 肉・魚・卵・大豆製品 | 骨や筋肉、エネルギーのもとになる |
---|---|
2群 小魚・海藻・乳製品 | 骨や歯のもとになる、体の各機能を調節する |
3群 緑黄色野菜 | 皮膚や粘膜を保護する、体の機能を調節する |
4群 淡色野菜・果物 | 体の機能を調節する |
5群 穀類・いも類・砂糖 | エネルギーのもとになる、体の機能を調節する |
6群 脂肪を多く含む食品 | エネルギーのもとになる、必須脂肪酸の供給源となる |
6つの基礎食品群をバランスよく食べるために、厚生労働省は「食事バランスガイド」というツールを提供しています。食事バランスガイドは、食事の量と各食品群の割合を視覚的にわかりやすく示したものです。
ポイントは以下の通りです。
- 6つの基礎食品群すべてから、毎日必要な量を食べるようにしましょう。
- 主食は、ご飯、パン、麺類など、炭水化物が豊富な食品を選びましょう。
- 主菜は、魚、肉、卵、大豆製品など、たんぱく質が豊富な食品を選びましょう。
- 副菜は、野菜、きのこ、海藻、果物など、ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富な食品を選びましょう。
- 脂質は、とりすぎに注意しましょう。
醤油の主な原材料は大豆、小麦、塩、水なので6つの基礎食品郡で言うと、大豆製品が含まれる1群に該当します。
参考リンク
以上が5大栄養素、3色食品群、4つの食品群、6つの食品群と、各分類で見た醤油の位置づけになります。
次からは醤油に含まれる栄養素についてもう少し詳しく見ていきます。
醤油に含まれる全栄養素について詳しく解説
醤油は大豆、小麦、塩を主な原料として、麹を発酵させて作られます。さまざまな種類の醤油がありますが、一般的には塩分、たんぱく質が多く含まれています。
その他、ミネラル、ビタミンB群、炭水化物なども微量ですが含まれます。
塩分 | 醤油は塩分を多く含んでいます。特に濃口醤油は食塩分が16%程度あります。 |
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たんぱく質 | 醤油には少量のたんぱく質が含まれています。ただし、あくまでも調味料であり主なたんぱく質源としてはあまり利用されていません。 |
ミネラル | 醤油にはカリウム、カルシウム、マグネシウム、リンなどのミネラルが含まれています。特にたまり醤油はミネラル類を多く含んでいます。 |
ビタミンB群 | ビタミンB1、B2、B6などが微量含まれますが、その量は非常に少ないです。 |
原材料から見た醤油の栄養成分
醤油の原料は大豆、小麦、塩です。醤油の発酵過程では、微生物の作用によって原材料の栄養素が変化し、醤油特有の風味や色、栄養成分が生成されます。
大豆
大豆はタンパク質が豊富であり、発酵過程で、大豆のタンパク質はアミノ酸に分解されます。これにより、醤油には必須アミノ酸を含む高いアミノ酸スコアを持つことになり、特にグルタミン酸が豊富で、これが醤油のうま味の源となっています。
小麦
小麦は醤油の甘味や香りの元となる炭水化物を提供します。発酵中、小麦の糖類はアルコールや有機酸に変化し、これが醤油特有の香りや味わいに貢献します。また、小麦に含まれるビタミンB群も醤油に微量ながら含まれます。
塩
塩は醤油製造の際、発酵を促進し、微生物の生育をコントロールするために重要な役割を果たします。塩分は醤油の保存性を高めるとともに、特有の風味を形成しますが、栄養面での寄与は主にナトリウムの供給になります。
日本食品標準成分表より醤油に含まれる栄養素一覧
- 可食部100g当たり
食品名 | こいくち | うすくち | たまり | さいしこみ | しろ |
---|---|---|---|---|---|
エネルギー(Kcal) | 76 | 60 | 111 | 101 | 86 |
水分(g) | 67.1 | 69.7 | 57.3 | 60.7 | 63.0 |
アミノ酸組成によるたんぱく質(g) | 6.1 | 4.9 | 9.2 | (7.6) | (2.0) |
たんぱく質(g) | 7.7 | 5.7 | 11.8 | 9.6 | 2.5 |
脂質(g) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
炭水化物(g) | 7.9 | 5.8 | 15.9 | 15.9 | 19.2 |
ナトリウム(mg) | 5700 | 6300 | 5100 | 4900 | 5600 |
カリウム(mg) | 390 | 320 | 810 | 530 | 95 |
カルシウム(mg) | 29 | 24 | 40 | 23 | 13 |
マグネシウム(mg) | 65 | 50 | 100 | 89 | 34 |
リン(mg) | 160 | 130 | 260 | 220 | 76 |
鉄(mg) | 1.7 | 1.1 | 2.7 | 2.1 | 0.7 |
亜鉛(mg) | 0.9 | 0.6 | 1.0 | 1.1 | 0.3 |
銅(mg) | 0.01 | 0.01 | 0.02 | 0.01 | 0.01 |
マンガン(mg) | 1.00 | 0.66 | – | – | – |
ヨウ素(μg) | 1 | 1 | – | – | – |
セレン(μg) | 11 | 6 | – | – | – |
クロム(μg) | 3 | 2 | – | – | – |
モリブデン(μg) | 48 | 40 | – | – | – |
ビタミンA|レチノール(μg) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンA|α-カロテン(μg) | 0 | 0 | – | – | – |
ビタミンA|β-カロテン(μg) | 0 | 0 | – | – | – |
ビタミンA|β-クリプトキサンチン(μg) | 0 | 0 | – | – | – |
ビタミンA|β-カロテン当量(μg) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンA|レチノール活性当量(μg) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンD(μg) | (0) | (0) | (0) | (0) | (0) |
ビタミンE|α-トコフェロール(mg) | 0 | 0 | – | – | – |
ビタミンE|β-トコフェロール(mg) | 0 | 0 | – | – | – |
ビタミンE|γ-トコフェロール(mg) | 0 | 0 | – | – | – |
ビタミンE|δ-トコフェロール(mg) | 0 | 0 | – | – | – |
ビタミンK(μg) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
ビタミンB1(mg) | 0.05 | 0.05 | 0.07 | 0.17 | 0.14 |
ビタミンB2(mg) | 0.17 | 0.11 | 0.17 | 0.15 | 0.06 |
ナイアシン(mg) | 1.3 | 1.0 | 1.6 | 1.3 | 0.9 |
ナイアシン当量(mg) | 1.6 | 1.2 | 2.0 | (1.7) | (1.0) |
ビタミンB6(mg) | 0.17 | 0.13 | 0.22 | 0.18 | 0.08 |
ビタミンB12(μg) | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.2 | 0.2 |
葉酸(μg) | 33 | 31 | 37 | 29 | 14 |
パントテン酸(mg) | 0.48 | 0.37 | 0.59 | 0.57 | 0.28 |
ビオチン(μg) | 12.0 | 8.4 | – | – | – |
ビタミンC(μg) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
アルコール(g) | 2.1 | 2.0 | – | – | – |
食塩相当量(g) | 14.5 | 16.0 | 13.0 | 12.4 | 14.2 |
醤油に関する豆知識
醤油に関係する豆知識として、醤油の起源、醤油の種類、醤油の保存方法について解説します。
醤油の起源について
醤油という用語は室町時代に登場しましたが、それ以前から存在していた「醤(ひしお)」と呼ばれる発酵調味料が醤油の原型とされています。
この発酵過程において、人々は塩に漬けた食材がうま味を帯びることを発見し、「醤」の製造に至りました。
「醤」に関する最も古い記述は、紀元前に成立したとされる「周礼(しゅらい)」に見られ、当時は肉や魚を主材料とした「肉醤」「魚醤」が主流であったことが伺えます。
穀物を用いた「穀醤」が出現するのは、それよりも後の紀元後のことです。
醤油の分類について
日本農林規格(JAS)では醤油を以下の5つのカテゴリーに分けています。
こいくち | 大豆(脱脂加工大豆を含む。以下同じ。)と小麦をほぼ等量使用したものをしょうゆこうじの原料としている。全国で生産・消費されているが、九州では甘みが強く濃厚なこいくちしょうゆが製造されているなど、地域によって味や香りに差がある。 |
---|---|
うすくち | こいくちしょうゆと同様、大豆と小麦をほぼ等量使用しているが、製品の色を淡くするために、仕込みの際に食塩の量を多く使用する。また、味をまろやかにするため、米を糖化させた甘酒を使用することもある。色や香りが抑えてあるので、素材の持ち味を生かす炊き合わせや、含め煮などの調理に適しており、関西で多く使用されている。 |
たまり | しょうゆこうじの主原料は大豆であり、小麦の使用はごく少量である。底にたまった液を汲みかけながらほぼ1年間発酵・熟成させる。東海地方中心に製造されている。色が濃く、とろ味があってうま味が強いのが特徴である。加熱すると赤みがかったきれいな色が出るので、照り焼き、煎餅、佃煮などの加工用にも使用されている。 |
さいしこみ | こいくちしょうゆと同様、大豆と小麦をほぼ等量使用ているが、食塩水の代わりに生揚げ(発酵させ、及び熟成させたもろみを圧搾して得られた状態のままの液体)を使用する。中国九州地方中心に製造されている。 |
しろ | 色、味、香りとも濃厚である。卓上のしょうゆとして、刺身や寿司等に使用されている。しょうゆこうじの主原料は小麦でこれにごく少量の大豆を使用している。色の濃化を防ぐため、短期間、低温で醸造する。愛知県で主に製造されている。うすくちよりもさらに色が淡く、琥珀色である。色の淡さを生かした吸い物や茶碗蒸し等に使用されている。 |
醤油の保存方法
醤油の正しい保存方法を知って、最後まで美味しく使い切りましょう。以下に、開封前と開封後の保存方法、賞味期限の目安、そして醤油を美味しく保つためのポイントを紹介します。
開封前の保存方法
醤油は空気に触れることで酸化が進むため、開封前は常温で保存しても問題ありません。ただし、光や熱によっても劣化が進むことがあるため、暗く涼しい場所で保管しましょう。
開封前でも劣化が進むことがあるため、なるべく早めに使い切ることをおすすめします。
開封後の保存方法
開封後は冷蔵庫での保存がおすすめです。冷蔵庫の中で保管することで、光と熱を遮ることができます。
醤油さしなどに小分けしている場合も、使わない時は冷蔵庫に保管しましょう。
賞味期限の目安
開封後は1か月程度を目安に使い切るようにしましょう。醤油は透明感のある赤色から次第にくすんだ茶色や黒色に変化し、香りや味にも変化が現れます。
未開封の場合
ペットボトル容器は酸素を透過するため賞味期間が短く、ガラス瓶は長めに設定されています。色合いが薄い白醤油や薄口醤油は賞味期間が短い傾向にあるようです。
醤油に含まれる主な栄養素とは?まとめ
醤油は、その独特な風味と豊かな味わいで、世界中の料理に欠かせない調味料となっています。
大豆、小麦、塩、水を原料とし、長い発酵過程を経て作られる醤油には、塩分、たんぱく質やアミノ酸、ビタミンB群、ミネラル、抗酸化物質など、様々な栄養素が含まれています。
これらの栄養素は、醤油を使った料理をより健康的に、また美味しくすることに貢献します。
5大栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル)の観点から醤油を見ると、主にたんぱく質と微量のビタミン、ミネラルが含まれていることが分かります。
ただし、醤油は調味料であるため、これらの栄養素を大量に摂取することは想定されておらず、栄養補助の観点よりも、料理の味わいを深めるために使用されます。
3色食品群、4つの食品群、6つの基礎食品群といった分類法から見た場合、醤油はその成分から考えると主に「肉・魚・卵・豆類」グループに由来するたんぱく質と「穀物」グループに由来する炭水化物を含んでいると言えるでしょう。
しかし、その使用法は「調味料」としての役割が最も強調されます。
塩分が高いため、使用量に注意しつつ、醤油を使って料理の味わいを引き立て、栄養面でも利点を享受することが重要です。
醤油はその歴史ある製法と栄養の側面から、私たちの食卓に欠かせない存在であることが確認できます。